札幌高等裁判所 平成9年(行コ)2号 判決 1997年10月31日
控訴人 小塚侑子
被控訴人 小樽労働基準監督署長
代理人 千葉和則 林俊豪 里見博之 ほか三名
主文
一 本件控訴を棄却する。
二 控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
一 当事者の求める裁判
1 控訴人
(一) 原判決を取り消す。
(二) 被控訴人が昭和六三年一一月二日付けで控訴人に対してした労働者災害補償保険法による遺族補償給付及び葬祭料を支給しない旨の処分を取り消す。
(三) 訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。
2 被控訴人
主文同旨
二 当事者の主張
当事者双方の主張は、原判決二七頁四行目の「以下」の次に「「」を加え、控訴人の当審における主張として次のとおり加えるほか、原判決の「事実一の中の一第二 当事者の主張」に記載のとおりであるから、これを引用する。
「(控訴人の当審における主張)
じん肺と肺がんとの関係については、国内外の研究を総合して評価すれば、現在の研究は、両者の間に医学的関連性を認めるところまで至っている。この研究到達点を考察するにあたっては、多数の研究報告を機械的に羅列して量的比較を行うのではなく、信頼できる研究機関や研究者がいかなる内容の研究を行ったのかということが十分検討されなければならない。かかる観点から様々な研究報告を吟味すれば、じん肺と肺がんとの医学的関連性を肯定する水準にまで内外の研究が到達していることが理解される。」
三 証拠関係
証拠関係は、原審訴訟記録中の証拠目録に記載のとおりであるから、これを引用する。
四 当裁判所の判断
当裁判所も、控訴人の本件請求は理由がないから棄却すべきものと判断するが、その理由は、原判決三五頁一〇行目の「専門家会議結果報告書」を「専門家会議報告書」と改め、控訴人の当審における主張に対する判断として次のとおり加えるほか、原判決の「理由」に説示するとおりであるから、これを引用する。
「(控訴人の当審における主張に対する判断)
じん肺が肺がんを招来する高度の蓋然性があると認めることは困難であること、宣夫の肺がんによる死亡が業務上の死亡であると認められないことは、原判決の理由に説示のとおりであり、控訴人の主張は採用することができない。」
五 結論
以上のとおりであり、原判決は相当であって、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、控訴費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 竹原俊一 竹江禎子 滝澤雄次)